『インドに比べればネパールは天国だった』
そういった男性の言葉はあながち間違っていない。
正しくはバラナシに比べたらだろうが、それでもこの涼しさだけでもネパールに来る価値はある。
しかし、ここはどこか外国に来た気がしない、いや、正しくはネパールという国に来た気がしない場所である。
タメル地区と言われるカトマンズのこの地区は、世界各国から(欧米・韓国・中国・日本)バケーションを楽しみに人が集まってくる。
故に、この場所はネパール人よりも外国人のほうが多いぐらいである。
街にはクラブ・バー・多国籍料理・宿・そしてトレッキング用の道具屋と土産物屋が数多くあり、それぞれの場所でそれぞれの国籍の人が楽しんでいる。
何よりも、その物価の安さである。
安く過ごせば500円で一日過ごせてしまうのではないだろうか?
多くのバックパッカーが沈んでしまうことがよくわかる(旅人がその地に定住してしまうことを沈没というらしい。)。
また、ネパールの人々はインド人より日本人寄りである。
顔も性格も。道を聞くと『店があるから一緒にはいけないんだけど…』と言いながら、10分もかけて説明してくれる。終いには人が集まってああでもないこうでもないと言ってくれる、私が英語を解
せないことすら知らずに。
そして外国人慣れした人々。
確かにインドに疲れたらネパールに来るべきである。
25ドルのビザ代など惜しむ必要もない。
私は、観光地に入るために700ルピー払うのが嫌だということを理由に、街の中心にある観光名所を省き、街のあちこちを散策した。
タメル地区を離れ、喧噪がなく道が舗装されていない道路、ゴミが大量に捨てられた川、新聞紙で作られた家から聞こえる子供の鳴き声。毎日の停電。
チベット難民キャンプ。
ショッピングモールがあったり、綺麗な町並みの場所もあれば、砂埃舞い、鳥インフルが流行していた上海よりも、多くの人々がマスクをつけながら生活していた。
貧乏旅行においては見るべきところは観光地ではなくむしろそのような郊外なのだ。
上海もそうだったが、ここにおいても郊外は発達が非常に遅れ、人々は不便で貧しい生活のままである。
彼らは街の真ん中で楽しそうに休暇を過ごす外国人に対して、どのような思いを持っているのだろう?
もちろん、観光業のおかげで成り立ってるのであろうこの町において、彼らを悪いようには言えないが、もっとうまく共存する方法はないのだろうか、と思うときはある。
ネパールには鉄道が走っていない、すべては車移動である。
移動をしたら戻ってくるのは体力的に厳しい。
私は決めかねている、ここでの滞在日数を。
とても面白い街であるが、楽しめば楽しむ分だけ金は消えていくわけだし、これは私の求めていた『旅』ではない気がする。
金はかかるが、ここでできることは他国、たとえ日本であってもできるのではないだろうか?
少し頭が痛い、標高が高いだけある。
明日またこの町を見て、滞在日数を決めた後、移動するとしよう。
続く…