2-40. 危険な国境越え-アガラク-

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ダブリーズについたのは17時だったが、私は国境が24時間空いてるという情報を元に、そのままアルメニアまで行く方法を考えていた。

ここは国境越えの起点となる街である。
トルコに行くのか?とバスが声をかけてきて、アルメニアかアゼルバイジャンいくの?とタクシーが声をかけて来る。

しかし、3時間を有する道のりは当然のようにタクシーは高い。

私はバスはないものかと声をかけていたら、アゼルバイジャンに戻るという陽気な親父が20ドルでいいよ!と言ってきた。

20ドルならまぁ高くはないだろうと思い、お願いしたのだが、それを後々後悔することとなる…。

先に期しておくが、今回の国境越えは、始めての国境越えであったネパールインドより、危険地帯を通ったパキスタンイランより、恐怖感を味わう結果となった。

イタリアを思わせる陽気な親父は、多分『ジャパン!最高!アゼルバイジャン!最高!イラン!最高!ジャパン、アゼルバイジャン、友達ー!』を連呼する。

その後に私の太ももをマッサージしてくる、手をつなぎたがる、手にキスする、抱きしめて来る、ほっぺに熱いキスする。etc…

皆もご存知の通り、私の国では同性同士が肌を触れ合う文化がない。
もしかしたら、これはただのスキンシップかもしれないが、股間をナデナデしてきた上に、ビュースポットで車を止めで私の髪を撫で下ろし抱きしめて来た上に、親指を人差し指の下に入れた拳を見せてきた時に私は恐怖感を感じずにはいられなかった。

腹巻き型のセーフティーバックが唯一の救いだった、バックは金品だけでなく、私の股間を死守するのにも有効であったのだ。

いや、それだけならまだいい。
山道である曲がりくねった道を、彼は抱きしめる時、キスする時、前を見ずにハンドルを離すのだ。

彼にとって道路のセンターラインは、車をセンターに合わせるものと勘違いしてるのではと思ったほどた。

途中、ポリスの停止を振り切り、『多分ナンバー書きとめられたけど、俺はアゼルバイジャンに戻るから大丈夫さ!はっはっはっ!』的な事を言って、車がスピンしても、道路脇の土砂にぶつかろうとも御構い無しにスピードを上げる。

旅に出る前に交通事故を起こした私は気が気ではなかった、彼のセクハラを回避し、運転の速度を緩めさせ、それでいて目的地までちゃんといってくれるように機嫌をとる。

私にとって来れほどまでに気を使った国境越えは始めてであった。

蛇足ではあるが、私の顔はとてもじゃないが賛美されるようなものではない。
しかし、腕と手は別である。その毛量の少なさと、細さは時に女性から羨ましがられるものである。
それに加え、毎日固形石鹸で洗っているから物乞いの子供のようにボサボサではあるが、長い髪である。
顔面の卑猥さに目をつむれば、きっと彼らには魅力的に写っているのだろう…?

そんな恐怖も超え、やってきた国境越えはパキスタン、イランに比べればこの上なく簡単であった。

イランイミグレには英語を話すイラン人もいて、紳士的、アルメニア側にいたってはビザの発行から通り抜けるまで30分とかからなかった。

21時、夜中に橋の国境超えを一人でするのは、なんだか面白くもあったが、どうしたものか。あたりは真っ暗だ。
イミグレで朝まで待ってもいいのだが、私は先ほどの運転のせいで疲れていた、寝たい。

『野宿できるんじゃ?』

私はこの山々に囲まれた人の少ない中なら野宿出来るんじゃないかと考え、橋の下にスポットを見つけ、日本から持ってきた毛布にくるまり寝る事とした。
野犬の鳴き声に恐れながらも、草むらで便をして…

海外に来た日本人としては恥ずべきことかもしれないが、静かな中、星を眺めて寝るのも気持ちの良いものであった。

3時すぎ、当たりが明るくなると同時に目が覚めた。相変わらず夜が短い。

山々に、コーカサスの地にに来たんだと、そう思えた。
さぁ出発しよう、エレバンに向けて。
続く…


Hokuto Aizawa
世の中にあきれられた一人の男が、世界を半周した後、北国カナダのトロントにて庖丁に出会う。日本に帰国後、ふらふらしながらも目の前にある美しい事々を見逃さないように暮らす。

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