2-44. 入国後の事件-トビリシ-

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アルメニアの最後の晩にはバレエを鑑賞することにした。

エレバンの中心には立派なオペラハウスがある。
そのオペラハウスで2000D、日本円で500円でバレエやオペラ、演劇を鑑賞することが出来るのだ。

私はアルメニアでの最後の晩に『ドン・キホーテ』のバレエを見ることにした。

私は不安であった。対して芸術に感動することもない私がバレエに感動できるか。
始まって10分で飽きてしまわないか。
しかし、その不安は10分で解消されることになる。

生オーケストラつきのその演目は、私の目から見ても明らかにレベルの違うトップバレリーナと、ドン・キホーテの仲間のコミカルな動きが私を実に愉快にさせてくれた。
終わった時にはスタンディングオベーションで拍手を送るほどであった。

演目が終り、外に出る。
エレバンの中心街の夜は本当に美しい。
音楽が流れ、その音楽に合わせて噴水が踊る。
音楽が陽気なクラブミュージックの時に、噴水前に人だかりができる。
上手なダンサーでもいるのかと思うと、そこで踊っているのはおじいちゃんであった。
それを皆が取り囲みながら楽しんでいる。日本でこういう光景見れるかな?そう思いながら私はエレバンの美しい夜を堪能した。

翌日、私は歳の近い日本人二人とエレバンを後にした。
グルジアに向けて。

アルメニアの謎はロシア語を話す日本人に託して…。

バスに乗って6時間、グルジアの国境は実に簡単に超えることが出来る。
さらにこの国はノンビザ約1年の国だ。移住しようと思えば簡単にできてしまうのだ。

宿を目指してメトロに乗っていると酔っ払いが絡んできた。
氷の入ったペットボトルに水を入れてほしいという要求だと思うのだが、酔っ払いを相手にするのは面倒だと思い、断っていると、私たちに対して現地語で大演説を始める。

私は表情が読めなかったが、どうやら怒っていたようで。
ペットボトルに入っている少ない水をアメリカ留学イケメンボーイにかけ始めた。

その侮辱行為に、つい『なにやってんの?』と言うと相手が頭を出してくる。

『日本のヤンキー方式?』

と思い、私も頭を差しだし、牛の威嚇のように押し合っていた。
その間、私の視界に入っているのは彼の目ではなく、腕であった。
私の二倍はあるその腕を見ながらそれでも引けないでいると、現地人が止めに入ってくれる。

明らかない悪いのは酔っ払い。

悪い印象を受けそうになったグルジアだったが、その後、数人のグルジア人が
『すいません、そしてようこそグルジアへ』
そういったことで逆に印象は良くなってしまった。

酔っ払いのたちが悪いのは万国共通のことである。

場を悪化させようとする人間はどこにでもいるもので、一緒に行動をしていたもう一人の日本人はその後もその酔っ払いをおちょくっていた。

『話にオチをつけないと面白くないじゃないですか。』

彼のように何事も楽しくしようという気持ちは、見習わなければいけないな、と思うのである。

到着した宿はワインとディナーがフリー、 wifiもフリー。
それで600円である。
宿と宿の前のスーパーマーケットで完結する生活が出来てしまう。
ワインを飲みながら朝まで語っても、値段は変わらない。
そして宿に集まり多種多様な人々。

『楽しい』

アルメニアとグルジアでは純粋にこの感情だけで生活することができてしまうのだ。いいのか悪いのかは、わからないが。

続く…


Hokuto Aizawa
世の中にあきれられた一人の男が、世界を半周した後、北国カナダのトロントにて庖丁に出会う。日本に帰国後、ふらふらしながらも目の前にある美しい事々を見逃さないように暮らす。

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