ガンジス川の日の出は、美しかった。
上がりゆく太陽が、川に一本の道を作り出すようだ。
人々は沐浴をはじめ、街が動き始める。どの場所でもやはり、朝は素敵なものだが、
この土地においての朝 、いや、朝だけでなくすべてが特別のように感じることができる。
宿に帰ると子供が『君のフレンドが来てるよ!』と教えてくれた。
ドアを開けるとそこにいたのは私より後にだまされ宿に来た二人組であった。
このゲストハウスで再会を約束したのだが、無事たどり着いたようだ。
私たちはハイタッチして、騙され旅行からの解放と、到着を喜んだ。
一緒に宿を共にした彼は、私から宿代を受け取ろうともせずに、帰って行った。
恵まれた出会いに感謝しなければならない。
新たに来た二人組のうち一人マンチェスターの大学を出て、現在海外で活躍機会のある会社で働いているとのことであった。
彼らは私の旅行をうらやましいと言ってくれたが、私からすると立派に生計をたて、二人旅をする友人がいる彼らのほうがよっぽど羨ましかった。
彼らは、私が行動を共にしても嫌な顔一つしなかった。彼の流暢な英語は私を関心させ、そして助けてくれた。
この川には火葬場がある、そしてその火葬場を間近で見ることができるのだ。
私はそれを初めて見たとき、その異様な空気感に圧倒された。
そして、彼らにとって死とは、水を浴びること、洗濯をすること、仕事をすること、清めることと何ら変わりがない日常のことなのだと感じることができた。
ここにあるすべてがそうである。
牛、猿、犬、山羊、物乞い、旅行者、すべてがこの町を形づくっている。
なんてことはない、すべてはガンガの流れのゆに、ゆるやかな一環でしかないのだ。
二人部屋を失った私は、本日より5つのベッドが横並びにあるドミトリーへと宿を移した。
現在この大きな部屋に一人で止まっている。
ネズミもゴキブリもいる(建物自体はすごく清潔であるが。)、日本では考えられない生活である。
屋上からの景色がいいと聞いたので、屋上に上がったのちに降りると、どこからか声がする。
あちこち歩き回って屋上へと行くと、一人の老人がドアの向こう側に立っていた。
恐る恐るドアを開けてみると、『私はここに住んでいるので、ドアに鍵をかけないでください。』と言っているようだ。
ここに住んでる?
確かに屋上に一室だけある部屋を見ると、彼の生活がある。
私だけじゃなかったのか?
明日は同室に日本人が泊まりに来るらしい。
私はすっかりこの宿が気に入ってしまった。
長居になってしまいそうだ。
面白いインド人、怪しい宿、神秘的な川、安い生活。
ここには私の求めていたものがすべてあるような気がする。
明日を日の出を見るために早く寝るとする。
きっと何度見ても美しいのだろう。
続く…