2-3. 危険な街-西塘-

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先ほどの日記は『これ以上面白いことも起きないだろう』と昼間にアップしたのだが、この町は違った。
きっと明日も起こるだろうから、暇な時間があるうちに皆に伝えておこうと思う。

この町は危険である。
昼間、盛り上がりを見せるのは飯屋やお土産物屋しかないが、夜7時を回ったあたりから、若者が急に増えだす
『音楽街』という通りが渋谷のクラブ通りのようになるのだ。
カントリーからエレクトロまで、様々な音楽が大音量で流れ出す、シーズン中の江の島のようなものだ。

私が海外に行くにあたって、多くの大人たちから言われた忠告は『水に気を付けろ』と『夜出歩くな』であったが。
二日目にして当然のように破ってしまった。

その通りにある一軒が声をかけてくれて、値段を筆談を交えて聞くと『ビール一杯35元』だという。
上海の飯屋で飲むと580mlが5元だというのに!300mlでその数倍の値段もする!
さすがはディズニーランドである。

しかし、ギターを片手の男が、今からにでもライブを始めようかとしていたので、聞きたくなって入ってしまった。
曲は洋楽から中国の曲まで。カントリーロードを歌い始めたときはついテンションが上がってしまった。
皆が女連れで楽しみに来ている中、私一人音に乗っていると、呼び込みをしていたいまどき風の若者が話しかけてきた。
紙に書いてもらうと『那里的人?』
意味はまったく理解できなかったが、たぶん出身を言っているんだろうと『日本。東京』と書いた。
ナウい若者に負けじと見え張って大都会出身ということにしてしまった。

かれはそれを見ると『そうか!』(中国語の違う意味かも知れない)と言い、タバコを分け与えてくれた。
歌も、シンセサイザーが加わり、どんどんアップテンポの曲になっていき私はノリノリで毎回拍手を送っていた。
拍手を送ると『謝謝』と言ってくれて、マスターらしき人に乗っていますアピールをすると笑って返してくれる。

楽しくなってビールを二杯も飲んでしまってから、私も『謝謝』と言ってその場の歌手と店員にお別れをいう
『さよならー』と返してくれて機嫌がよくなってしまう。

次はクラブサウンドの店に入りたいと思って店を回ってみたのだが、ある看板を見た瞬間に私は宿に帰宅した。
『日本人犬○×▽(覚えていない)入内』と書いてあった。
たぶん『犬みたいな日本人は入ってくんじゃないよ』って意味だろう。

怖くなって足早に宿に帰ってきた。
さまざまな意味でこの場所は危険である。

本来なら『反日感情なんだそりゃ』と日記を書こうと思ったのだが、そんな気持ちは文字から出る嫌なオーラのせいで一気になくなってしまった。

日本人だといってもやさしくしてくれた若者たちも事実だし、上海で止まった宿の女の子は日本のアニメと漫画が好きだと言って、日本語が堪能であった。(日本に行ったことはないらしいが。)

しかし、少数の反日感情によって私が悲しくなってしまったのは事実である。
皆も、小を見て大と決めつけないでほしい。どこに行ったって人間は様々である。

平和に中国を終われることを願って、明日は上海に戻ろうと思う

続く…


Hokuto Aizawa
世の中にあきれられた一人の男が、世界を半周した後、北国カナダのトロントにて庖丁に出会う。日本に帰国後、ふらふらしながらも目の前にある美しい事々を見逃さないように暮らす。

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