2-56. 普通じゃない国の普通の街-プリシュティナ-

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イメージしてみよう。

ここは、約15年前、他の旧ユーゴスラビア諸国と同じく、独立と民族浄化のための非人道的な紛争を多く起こし、約5年前に正式に独立を宣言し、国旗が作られた国である。
現在国連加盟国の約半数が独立を認証しておらず、その中にはロシアと中国が含まれている。

まずウィキペディアか何かで調べてほしい。

そこできっとあなたの頭の中に浮かぶのは、あまり良くないものだろう。
野蛮な人間と、破壊された街。
私はあなたがそんなイメージを持った国の首都に来た。
国が新しいならば、必然的に新しい首都である。

バスターミナルで偶然、日本人のバックパッカーに出会った。

『なーんもないよ』

彼にそういわれながらも、私はその日に見つけることができたホームステイ先の男を待っていた。

その男と共に出た街は、私のイメージを、私のイメージ通りに壊してくれた。
パキスタンとイランを旅して、私はある程度良いイメージを持ってその国を訪れるようになったが、それでももう少し荒れた街を想像していた。

人々はヨーロッパ式のカフェで会話を楽しみ、街は舗装され街の中心はとても綺麗である。

作りかけの道や建物もあり、落書きも多く、信号の電気がきれていたりもするが、それでも私はその綺麗さに感動していた。
そこは、私の想像する紛争の跡形など、ほとんど有していなかった。

人々も優しく、私が日本人だと言うと、とても友好的に接してくれる。

ホスト先の彼は、家族をファンランドに持つ裕福な人のようだった。
スキンヘッドにグラサンのコワモテの男だったが、日本が大好きで、興奮しながら旅行した時の話をしてくれた。

使われてない協会と『NEW BORN』のモニュメント以外では、この場所が近年に独立した国の首都であるを感じさせない。

新しい政府関係の建物は、その象徴なのかもしれないが、もう出来上がり始めているというのが私の抱いた印象であった。
『なーんもない』
バスターミナルで行った彼の言葉も間違ってはおらず、ここにあるのは人々が生活するためのものであり、観光で来るような場所ではなかった。

私の住む街は、見所といえば映画館ぐらいで、その他には百貨店とカフェしかない、何もない街であるが、それで困ったことはない。

何もないのなど当然だし、普通なのかもしれない。
私たちが訪れるような、見所があるほうが特別なのだ。

ホストは、私の今後の旅のプランニングまでしてくれた。
彼は世界各国を『旅行』していた。
『インド』というと明らかな嫌悪感を抱く、これが先進国に住むの富裕層の正常な反応なのだろう。

『次は、どうするの?』

『海に行こうかな。』

私は、この何もない場所をみたせいで、はやり海にいきたくなっていた。

せっかくの夏なのだ、楽しもうじゃないか。

続く…


Hokuto Aizawa
世の中にあきれられた一人の男が、世界を半周した後、北国カナダのトロントにて庖丁に出会う。日本に帰国後、ふらふらしながらも目の前にある美しい事々を見逃さないように暮らす。

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