2-80. すべてを隠そうとする大人に反吐が出る-シエナ-

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ブドウの収穫を終え、私たちはシャンパンで乾杯した。

叔母曰く『閉鎖的で排他的なシエナ人』らしいが、仕事を一緒にして、毎日を乗り越えると自然と友人となっていた。
『I can’t speak English』なんて言ってた人も、最後は英語で話しかけてくれるほど。

街から街へ、国から国へ移動する、短い間しかいない私のような人間にも、やさしくしてくれて、バーやクラブに連れて行ってくれる。
そんな人々を見ると、人間の本質は善なんじゃないかと思わずにはいられない。

『何かを共にする』とは仲良くなるための最善の方法である。
旅、仕事、スポーツ。時間だけであっても大きな前進である。
我々が分かりあうためにはそれが必要なのだ。
2020年の我が国には、そんな大会を期待する。我々が知り合え、分かり合える、優良な時間を。

さてと、他国の人間に会い、仲良くなればその国のことを知りたくなるのは必然である。
きっとあなたがカナダ人に会えばこういうだろう
『メープルシロップ?』
マダガスカルなら
『ジャングル?』
ジャマイカなら
『レゲェ?』

そういう点では、日本という国は本当に特殊な文化を数多く発信しているなぁ、と海外にいながら感動することが多々ある。

アニメ、マンガ、忍者、侍、やくざ、カタナ…

『どっから仕入れたその情報』と思うようなことまで知っていたりする。

パキスタンなら
『TSUNAMI』
イランなら
『ヒロシマ・ナガサキ』
インドなら
『イクラナライイの!?ねぇ!?』

国によって日本人に対する質問事項が違ったりして結構面白い。
いまだに『忍者。侍』なんて言う人もいれば『本田、香川』と言ってくる人も多い。

ここイタリアでは多くの人に『ナガトモー!』と言われた。
今後も日本人サッカー選手が海外で活躍することを切に願う。

しかし私がイタリア、いやシエナに来て一番多くされた質問は

『どうして日本のポルノフィルムにはモザイクがかかってるの?』

であった。
私はその時、『確かに洋物って無修正だなぁ』と思いながら

『ルールだからだよ、そうしないと捕まっちゃうんだ』

と答え、そして自分のその答えに対して反吐が出そうになった。

思い出せ、いつからお前はそんなに丸くなったんだ、と。

ルールをルールだからと、許すような人間ではなかったはずだ、私は。

私は未来の純粋なる青年たちに対して、危惧せずにはいられない。

『18歳未満の方は入場いただけません。』
なんて言う暖簾をキチンと守り、18歳になるのを待ち望んでから今後の予習にと大人の世界へと踏み込む。

そこに広がるのは、今まで目にしなかったエロの世界、大人の世界。
一面なるピンク色と、同じ空間にいながらまったく異空間にいるように吟味する隣人。

ようこそこちら側へ、と私は歓迎したい。もう向こう側には戻れないぞ、と。

パイレーツオブカリビアンとジブリ作品なんかの間に挟んで、そのDVDを一本やっと借りるとする。

家に帰り、わくわくしながらも箱を開けてプレイヤーにディスクを差し込む。

そこに広がるのは大人の事情で一番大切な部分が隠された日本の体制を象徴するような映像だった。

そういえば昔、現代の子供の知識力のなさを揶揄するように
『最近の子供は魚が切り身の状態で泳いでいると思っている』
という、耳を疑いたくなるような話を聞いたことがある。

確かにスーパーでは魚はだいたい切り身の状態で販売している。

そしてその多くが隠された映像を見て、青年が

『何だ、これじゃぁ大事なところがわかりゃしない、とりあえず実践検証してみよう』
と思い、本番に挑むならよしとしよう。

『女性の恥部ってものはえらくモヤモヤしたものなのだなぁ』

などと思ってみよ。

彼にやっとこさ彼女が出来る。手を繋ぎ、デート、キス。
下の名前で呼び合って、一緒にオシャレなレストランでディナーしたりする

帰り道に町田にラブホ街があるというのはインターネットでチェック済み。
ドキドキしながらも部屋番号を押して、顔の見えない相手から鍵をもらう。

ランプの光る部屋に入り、互いにシャワーを浴びて、さぁ夢に見た本番だ!

そんなときにグワッっと開いた股間の先にあるものは、を見て青年は驚く、狼狽える。

予習したのと違う、えらくくっきりしている。
分からない、これはなんなのだ。

DVDで見たあの感じではない、なんだかリアルだ。

青年、本日初めての予想外の出来事に対処できず、町田のラブホテルの一室にてフられる。

日本の深刻なる問題、少子高齢化に拍車をかけることにもなりかねない。

大人はいつだってそうだ。
大事なところを隠して、そのことが若者たちにどんな影響を及ぼすかなんて考えもしない。

払っても払われない年金、今後背負っていかなければいけない原発

我々が今背負っている多くの負担は、大人が、大人の事情で勝手に決めて隠してきたがゆえに露呈してきた問題だ。許されざる愚行、許されざる悪政!!

『醜いものだから?』『汚いものだから?』

よく考えてほしい、では男性諸君は毎朝用を足しに行くたびに

『醜いなぁ汚いなぁ』などと思っているのか、そこにあるのは自分の意思とは別に動こうが、まぎれもない体の一部だ、私だ、あなただ!

しかし確かに私も自分のイチモツをまじまじと眺めるたびに、内臓が露出したようなその姿に
『醜いなぁ、汚いなぁ』
と思ってしまうときがある。

それすらも弊害ではないか、モザイクの、修整の。

モザイクが、お前のイチモツは醜いのだぞと、暗に私に植え付けたことが。
私は、私自身を、醜いと思ってしまうときがあるのではないか。
私はもっと自信を持ちたい、私自信に。

見せるなら全部見せよ、大画面のブルーレイディスクで。
毛の一本まで細部に至るまで、少しも修正を加えるでない。

パソコンに『無修正』と打ち込み、画面に前かがみになってよく見よ。

青年よ、それが君が将来幸せのひと時を味わうものの姿だ。
それが、リアルだ。
大人によって隠されていない我々が望んでいたものだ、平和だ、ピースだ、ラブだ!

醜いと思うか?汚いと思うか?
確かにそれは貴方の手や足に比べればいくらか混雑した造形かもしれない。

しかし我々はそこから生まれて来たのだ。

それは、我々が生まれるとき、新たな人生の入口でもあった。
そして我々が大人になって遭遇したそれもまた、新たな人生の入口だ。

皆も考えよ、いいのだろうか。大人に隠された世界、大人によって修正された世界。
我々が望むのはそんなものではないはずだ。我々が望むのは、無修正だ。

考えよう皆様も、それはこれは遠い未来の話ではない、現に我々に背負わされた話なのだから。

手に入れよう真実を、我々を。
誇ろう、自分を!

続く…


Hokuto Aizawa
世の中にあきれられた一人の男が、世界を半周した後、北国カナダのトロントにて庖丁に出会う。日本に帰国後、ふらふらしながらも目の前にある美しい事々を見逃さないように暮らす。

2件のコメント

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    「我々が望むのは、無修正だ。」エロ爆発だね。
    エロビデオから、ここまでよく掘り下げて語った!
    平和、ラブ、自分を誇ろうにもっていったのはすごい技!
    関心したわ!ただのエロなだけなんだけれども!

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