2-82. 久しぶり-ウィーン-

ああああ

結局イタリアに一か月もいてしまった。

しかもそのほとんどをシエナの叔母の家で。

ロンドンにたどり着くまでは、『沈没しないように…長居しないように』と、皆からも驚かれる速度でアジアを超えてきたというのに、『友人のいるうちにロンドンへ』というミッションが終えてから、まるで名怠け者のように動く気がなくなってしまった。

いや、怠け者だ。叔母の美味しい料理、従弟の送り迎えで毎週末はパーティ。

毎晩一杯のビール、叔父と寝転がりながらテレビ。

完全にだらけていた、口を開ければ叔母に漏らす言葉は

『北国やだよぉ、行きたくないよぉ』と

自分で行くことに決めたのではないのかと言いたい。23歳の大きな子供である。

そんな私もやっとこさ重い腰を上げる。

向かったのはオーストリアのウィーン、忘れたカメラを取るのと、ヨーロッパで出来た友人にお別れを言いに。

フィレンツェからウィーンに向かう途中、オーストリアに入ったか入ってないかぐらいでバスから外に出て、私は驚いた。

寒さで震えて煙草に火がつけられない。

高く青い空のもと、太陽に恵まれたイタリアで過ごしていた私は、夏がとうに去って行っていることを忘れかけていた。

もちろん、イタリアも私が来た9月中旬に比べれば、出るときは寒くなっていた。

それでも、半そでで外に出るのが少し肌寒いぐらいで会った。

暖かな国の人々が、愛国心が強いのもよくわかる。

そういえば、郷土愛が強い県も沖縄だということを思い出す。

オーストリアについたら、その寒さは多少和らいでいたが、それよりも寒いであろうアメリカ大陸の北部をなめていたとしか言いようがない。

従弟が使わなくなった厚手の服をいただいてなかったら、私は向こうで凍えて動けなくなっていたことだろう。

そもそもが私はこの旅で、北国に行くことも、冬が訪れることも考えていなかったのだ。

オーストリアは完全に秋の顔になっていた。

金色の落ち葉が敷き詰めれ、綺麗な絨毯を作り上げていた。

海外で会っても。春夏秋服と四季があるという当然の事に私は驚いた。

『四季のある日本』などと日本の『善いところ』として何度も聞かされた私は、

『海外って四季がないんだなぁ、三季とか二季とかなのかなぁ』などと思っていた

だが、すくなくともオーストリアには日本と似たように秋があり、日本と同じように落ち葉があった。

私は、この『日本が褒められるあまり外国を勘違いしてしまう』現象は結構皆の中にもあるのではないのかと思う。

例えば、『海外は危険』という考えもそうだ。

日本が『安全だ、安全だ』と絶賛されるあまりに皆の頭に『日本が安全って、海外ってどれだけ怖いところなのであろう…』と刷り込まれているのではないかと私は思う。

もちろん、先進国であっても、日本よりも危険な場所もあろうが、私が見る限り、そのような時間にそのような場所を通らなければ怖いなどということはない。

他にも、外国人は、日本人と比べて別に働かないわけでもないし、礼儀悪いわけでもない。

『そんなことわかってるわい』と言われるなら十分に結構。以上は私が日本にいたときに思っていたことなのである。

結局オーストリアでもここに記述するほどのことはしなかった。皆でパーカーを毎晩のようにしていた。

そういえば、『日本でよく行われているカードゲームを教えてくれよ!』と言われて私は迷わず『大富豪』を選んだ(地域によっては大貧民と呼ばれている。)。

きっと皆も共感してくれると思うのだが…。

運よく、その直前までやっていたカードゲームが似たようなルールだったこともあり、ルールの説明自体は簡単だったのだが、説明しながらなんだか面白くなってしまった。

『最下位の人は一位の人に一番強いカードを二枚あげるんだ、貧乏人っていうのはそう簡単に上に上がることはできないからね。』

『一位の人は一位を守り続けないとだめなんだ、次のゲームでは一位になれなかたら最下位、まるで敗戦国の戦犯者みたいにね。』

『でも貧乏人も安易に金持ちより強くなる方法がある、それがレヴォリューション!チェ・ゲバラだ!』

大富豪とは、なんて夢のないゲームなのだろう。

ちなみにこのゲーム、どこの国のゲームで、なんでこんなに人気なのか教えてほしい。

日本人が4人集まれば、必ずこのゲームで暇を潰すのだ。

オーストリアで特になにもない、でもそれが幸せだと思える素敵な日々を過ごし、私はヨーロッパ一の美しい都市へ行くために、バスに乗った。
必ずまた会いましょう、そう約束して。

続く…


Hokuto Aizawa
世の中にあきれられた一人の男が、世界を半周した後、北国カナダのトロントにて庖丁に出会う。日本に帰国後、ふらふらしながらも目の前にある美しい事々を見逃さないように暮らす。

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