インドのデリーで出会って、ヨーロッパでトマッティーナで再会しようといった彼が、ブタペストの日本人宿にいるというので、私はそこに宿泊することにした。
私はトマッティーナには不参加表明をしているので、彼とここハンガリーで会えたことがうれしかった。つい2か月前のことが、とっても昔に感じられる。
西側から来た多くの旅行者が、東欧の国々では『ハンガリーがよかった』と言う。
それより北や西側の国々よりも物価が安く、トルコと同じでルーツが日本人と同じというらしく、街にいる人々にも何故か安心感を感じる。
チャイニーズレストランや日本食屋も多く、肌色が似ていて、東洋人も良く見かける。
西から来た人も、東から来た人も、この地で少し落ち着いてからまた旅をリスタートする人が多いらしい。
街は実に美しい。
古い建造物が街一杯に広がっていて、どこに行っても旧市街のようだ。
新しいビルも、色は違っても、形の同じパズルピースをはめ込むように旧式の建物とサイズが合わせてあり、違和感を感じない。
ドナウ川周辺から見る夜景は、その街全体がいかに美しいかを教えてくれる。
そして物価が安い。ここに長居してしまう気持ちもうなずける。
何より素晴らしい日本人宿、ここでは外国を体験しながら、日本の安心感を得ることが出来る。
日本の食事を皆で作ることが出来、日本の漫画や映画を見ることが出来る。
フォアグラを安価で食べることができる。
初めて食べたフォアグラは、今まで体験したことのないような柔らかさで、私を幸せな気持ちにしてくれた。
そして何より、現在この国ではF1が開催されているらしい。
ブダペストよりバスで一時間弱、響く轟音の主は私が中高で憧れを抱いた、最新最高技術の集大成であり、最速の証のマシンたちであった。
17ユーロを払い、中に入る。本戦は翌々日でその日は練習走行であったが、私はその轟音と共に、当時と変わらないドライバーたちと、そのマシンを間近で見ることが出来、実に興奮していた。
日本からツアーで行けば約30万かかるものを、たった2000円で見ることが出来る。
時間があるとは何とも素晴らしいことなのだろう。
ずっと画面の中で眺めていた海外のモータースポーツに対する盛り上がりを、現地で体験することが出来るなんて、思ってもみなかった。
羨ましいだろうか?
皆も旅に出てみてはどうだろうか?
『帰ったあとの仕事が不安?』
『遊んでばっかもいられない?』
私は、新卒をなくしたり、日本人の復職を安易にするためには、やはり個々がそういう意識を変えていかなければいけないと思っている。
日本人が旅することをしばりつけているのは、決して法律じゃない、社会である。
その社会の意識を変えるために、必要なのは実績数である。
『みんなやってることだ、あたりまえなことだ』そう思える社会にすべきである。
皆も1か月の休暇がほしくないか?
一年の考える時間がほしくないか。
よし、社会を変えていこう。貴方から変えていこう。
周りに流され、不安を促進力にして進むのはもうやめよう。
怖い?
私は宿の管理人にこう聞いた
『日本ではなにしてたんですか?』
彼はこう答えた
『ホームレスとか、引きこもりとか…』
それ以上聞かなかったので、どの程度でどこまで本当なのかわからないが、生きるとは難しい、難しいが、死なないことは実に簡単だ、死ななければ、別にいいじゃないか、人生を楽しむほうにかけようじゃないか。
さぁ、旅に出よう。
そして、世界のどこかで会いましょう。
続く…