0-4. 僕の就職活動放浪記-手満-

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『お祈りします』

『何故ですか?』

『強いて言えば志望動機です、弱すぎます。

 

 

最終面接から10日後、 桜木町の巨大ビルに入る有名メーカーの直属商社からいただいたメールと、そのやり取りの概要である。

確かに、僕が面接全体を通して強く言ったことと言えば
『高いビルで働きたい』『設計開発したくない』
ぐらいのもので、何故その会社じゃないとダメなのか?という問いには
『別にほかの所が雇ってくれるならほかでもいいけど、まぁ大きいメーカーだし…』

ってな感じであった。

きっと、普通は事前にその程度の質問には模範解答を調べてくるのであろうが。
僕の心の中に小さな、とっても小さな『まだ就職したくない』という気持ちがその事前の学習を嫌がった。

この、僕の心に現れた小さな淀みはこの後の私の就職活動のやる気を急激になくしてしまう。

内定を辞退した『入る気ないなら受ける意味ない』
そして今回の『やりたいことじゃないとやる気でない』
という二つの感情が渦を巻き、何故だか『遊び』の方向にベクトルが向かってしまった。

その時に読んでいた本の影響も少なからずある
そして、就職前に自分のやりたいことを消化させようと海外に飛び立った友人の影響も多大にあるだろう。

このときに『まだ就職できる時期じゃない』ときっぱりやめてしまえばよかったのだが、皆が進む道から外れることが怖く、その気持ちにウソをつき、馬鹿なことに遊び呆ける日々を開始するのである。
遊んでバイトして、たまに研究室である。

もちろん、まったく受けてないわけではない、少しは受けた、そしてESも通った、最終面接に進んだりもした。

だけど、例えば
面接官『わが社の商品に興味はおありですか?』
僕『とりわけ興味もありませんが、仕事が楽しそうだなとは思います。』

みたいな、確実にネガティブな印象を与える受け答えをしていた。

就活はウソをつけ、そしてそのウソを本当にしろ。

これは今就職活動をしている人にアドバイスしたいことの一つである。
例えば『排気ダクト』を作っている会社があるとしよう。

福利厚生もいい、仕事内容もいい、ただ、『排気ダクトに興味のある人間』なんて僕は出会ったことがない。

『排気ダクトを作りたいんです!』ってのはだいたいウソだろう。

でも多分、それを調べていくうちに、仕事にしていくうちに好きになっていくのだろう。
そうすれば前に面接のときに『好きです!』と答えても嘘ではなくなるはずだ。

わかっている、今は相手にいい印象を与えるのが一番だ。

わかっているけど、出来ない。
やっぱりそこには『何か違う』という僕の感情があったのだろう。

ちなみにこの『遊びに逃げる』という行為は、10月上旬まで続けることとなるが、
その間に少し行っていた就活にも大きな変化が見られてきた。

今までの理系の仕事をやめ、映像制作やweb製作の会社を受け始める。

やはり僕が会社の説明を受けて、『やりたい!作りたい!』というものはもっと明確に目に見える、娯楽のようなものだった。
人々を単純にワクワクさせたり、喜ばすことが出来る。
自分もワクワクしたり、ゾクゾクしたい、そういう気持ちが僕をその業界に向かわせた。

元からその業界を目指してる人からいわせれば『そんな甘いもんじゃない』と言いたいところだろうが
まったく携わってこなかったわりには頑張っていたと思う。

その頑張りが実ったのか、10月の下旬から、最終選考を兼ねたインターンに呼ばれることになる。
そのインターンで僕は現実をむざむざと突きつけられることとなるのだが…

続く…


Hokuto Aizawa
世の中にあきれられた一人の男が、世界を半周した後、北国カナダのトロントにて庖丁に出会う。日本に帰国後、ふらふらしながらも目の前にある美しい事々を見逃さないように暮らす。

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