2-18. 玄関口-デリー-

P1020313

約20時間の列車移動を終えた私は、偽旅行会社によって連れ出されて以来、約2週間ぶりにデリーへと帰って来た。

深夜3時にオールドデリーに着くが、『こっからニューデリー駅はニアだよ!』という神様の言葉を信じて、歩いてニューデリー駅へ向かうこととした、しかし、道に立ちふさがる数多くの犬、数少ない街頭に私は恐れてしまった。
あるのは精度の悪いグーグルマップ(現在地なし)だけ。1キロメートルも歩いた私は、その恐怖のあまりに値段交渉もせずにリキシャに乗り、ニューデリー駅のメインバザールまで来た。

この静けさの中、道端にいるのも怖いので、とりあえず500Rsもする安宿(日本のラブホテルのように窓がなくピンクの壁だった)に泊まり、明け方まで仮眠をとることにした。こんなことなら駅で朝まで過ごせばよかったと思いながら。

翌朝、外に出てみると、そこにあるのはやはりインドの姿であった。
昨晩の静まり返った姿はなんだったのか、店先からは『ハイ!フレンド!コンニチワ!アニョハセヨ!』と聞こえてきて、偽物のレイバンと、瓜二つの土産物屋が立ち並ぶ。

『あぁ、インドに戻ってきたんだな。』そう感じることができる活気であった。

デリーの日本人宿にチェックインする、この場所は私の旅においての、最後の日本人宿になるだろう…
ドミトリー300Rsと少し高い気がするが、朝食つき、なにより日本人宿はそれだけの金を払っても泊まる価値がある。
それは、言語が通じるということだけでなく、サービスの良さ、安心さ、これらにおいて日本人宿にかなう宿はないのではないだろうか?たとえシングルに300Rsで泊まれても、私は日本人宿にドミトリーで泊まるだろう。

ポカラでのゲストハウスと違い、ここにいるのは沈没者ではなく、通過者である。
インドに入って来たもの、インドを出る者。
デリーはインドの玄関口であり、その場には多くの旅行者の情報が一手に集まるのである。

ドミトリーで同部屋になった人々は歳も近く、皆、旅の中間地点ということで話がよく会うのだが、旅のスタンスは人によって本当にさまざまである。

私は毎日日記をつけているのだが、それをみて、皆は驚いていた。
また、皆HDDを持ち歩き、そこに多くの旅行者からデータでもらった漫画を入れてiPhoneで見ながら移動をするようだ。

私が陸路での横断を予定しているというと驚き、彼らはローコストキャリアを駆使して、安い移動費で世界を旅立っているのであった。今の時代、二か月あれば少額で世界を一周できてしまうのだ。
ドバイ経由で東欧に行く者。一度日本に帰り、入社式に出席してまた旅立つ者、インドが嫌で嫌でしょうがなくて動けなくなっている者、パスポートをなくして日本に強制送還される者。
デリーにはさまざまな人が滞在している。その多くは移動に対して熱意を持った人であるのが、ネパールとの大きな違いである。
誰も、この忙しく、煩わしく、汚く、インドの中では物価が高いここに定住しようとは思わないのだ。

インドが嫌で嫌でしょうがないという彼は、この宿でも特異な存在であると思われる。
彼はきっと旅行に疲れてしまったのだろう。IT機器が好きで、それを話始めると止まらない彼だが、ネパールを勧めて、一向に動こうとしない。面倒なのだろうか?これも一種の沈没の兆候なのだろうか。
きっと、時間の制約があまりない彼にとっては、動くことを急く必要はないのだろう。
私たちからうらやましい限りだが、一長一短である。

この時期から夏の終わりにかけて海外を旅する人々に、愛言葉があると、同部屋の男が教えてくれた。

『トマッティーナで会いましょう!』

8月28日、スペインのトマト祭り。
それに参加できるということは、私が無事にヨーロッパにたどりつけるということである。

トマッティーナで会いましょう!
そう行って明日の朝、私の旅はついに本章に入ることとなるだろう。

続く…


Hokuto Aizawa
世の中にあきれられた一人の男が、世界を半周した後、北国カナダのトロントにて庖丁に出会う。日本に帰国後、ふらふらしながらも目の前にある美しい事々を見逃さないように暮らす。

8件のコメント

  1. SECRET: 0
    PASS:
    こんばんは。
    お久しぶりです。
    インドで色々ハプニングがありながらも元気に旅行されていますね。
    いつも楽しみにブログ拝見させてもらっています。
    いよいよインドの旅を終えてパキスタンですね。
    今私はキルギスのビシュケクという所にいます。
    予定では私もビシュケクから中国のカシュガル経由でパキスタンにはいる時期だったのでもしかして再会できるかもと思っていたのですが、私もいろいろありまして予定がずるずる遅れており中国のカシュガルから日本への帰国の途につくことになりそうです。
    パキスタンは私にとっては見果てぬ地となってしまい残念で仕方がないのですが、私のかわりにがんばってパキスタンを満喫してきてもらえればと思います。
    パキスタンレポート楽しみにしていますね。(^^)

  2. SECRET: 0
    PASS:
    大将さま
    いつもコメントありがとうございます。あれからもう約一か月たつんですね。
    パキスタンに入り、またもや大金を使うはめになりました。
    大将さんのおっしゃる『ガイドブックなしは面白いけどお金がかかる』ということはたしかにその通りです。
    しかし、パキスタンの人々はとてもいい人たちです。外国人慣れしてないからなのか、とても人懐っこいです。ビザも簡単に取れるので、いつか是非きてみてください!

  3. SECRET: 0
    PASS:
    おはようございます。
    レスありがとうございます。
    いよいよパキスタンに入られたんですね。
    思っていたよりパキスタンが落ち着いた状況のようなので私も安心しました。
    諸事情(日程と交通事情のからみ)によりパキスタン入りはあきらめていたのですが、数日だけパキスタンのフンザに行けそうな状況になりましたので無理をしてでも急遽今日から中国のカシュガル経由で行けないかと検討をしていたりします。
    北斗さんはパキスタンは北部のフンザ方面には行かれないのですか?
    フンザは非常に人気のあるところなのでお勧めです。(^^)/

  4. SECRET: 0
    PASS:
    大将様
    それは!!カリマバードですよね?どちらに滞在しますか?
    本日夜よりギルギッドに向けて旅立つため、2日後には確実にカリマバードにいると思いますが、すれ違いになりそうですかね?
    パキスタン人は皆カシミール地方を褒めます。西はインドで、南はテロリスト、西北はアメリカのせいでいざこざが続く国ですが、人の優しさでいえばNo.ワンだと思います。

  5. SECRET: 0
    PASS:
    大将様
    この先ネットつながらなそうなので。
    私は今夜6時発のキルギット行き(約20時間)に乗ってその後すぐに乗り換えるので、あさっての夕方過ぎにはつく予定です。コショーサンゲストハウスを予定してますが、よかったらぜひ一緒に(笑)

  6. SECRET: 0
    PASS:
    大将様
    予定が変わり、現在ハイダーインにいます、よかったらぜひ。
    明日はいると思います。あさってはわかりませんが・・

  7. SECRET: 0
    PASS:
    おはようございます。
    お久しぶりです。
    せっかくレスをしていただいたのに返信の書き込みが遅れてしまい大変申し訳ありませんでした。深くお詫びもうしあげます。
    昨日ようやくキルギスのビシュケクから中国のカシュガルに到着をしました。
    今は宿のパソコンを借りてこの文章を書いています。
    私から北斗さんにパキスタンでの再会を呼びかけておきながら長期間返信のレスができず大変申し訳ありませんでした。
    キルギスの地方部は想像していたよりネットの接続状況と交通事情が悪くビシュケクからカシュガルまで約10日かかってしまいました。
    途中で北斗さんに連絡を取りたかったのですが途中パソコンのwindowsが壊れ、また公共交通機関がない部分が続いたのでをヒッチハイクを繰り返してどうにかこうにか到着したような感じです。
    ちなみにもう北斗さんはパキスタンにはおられないですよね?
    私は明日フンザに向けて出発するような感じです。
    今日今回の返信を書くにあたって北斗さんのレスを読んで顔が青くなる反面、再会を期待してくれた書き込みをしてくれたことをとてもうれしく思いました。
    今回は私の不手際というか段取りの悪さで再会はかないませんでしたがぜひ北斗さんが日本に帰国された際は再会が実現できればと思っています。
    いま北斗さんはどこにおられるのでしょうか?
    今回はご迷惑をおかけしてしまいましたがまた今後も書き込みをしたいと思っていますので書き込んだ際にはレスがもらえると嬉しいです。
    引き続きブログの更新楽しみにしていますね。
    追記;ひとつ上の書き込みにおかしな書き込みがありますが一度この書き込みと同じような書き込みをした際に書き込みエラーになってしまい跳ね返されてしまいました。
    そこで文章を再度書く前に本当に書き込みができないか試しに文章をテストで打ってみた書き込みになります。
    余計な書き込みをして申し訳ありません。

  8. SECRET: 0
    PASS:
    大将様
    ご丁寧な返信ありがとうございます。
    上海を出て以来、4日と同じ場所に滞在したことがない私ですが、なんとまだここにいます。
    しかし、そちらから明日出られるとこっちにつくのはいつごろになりそうでしょうか?
    明日出るつもりだったのですが、一日だけ滞在を延長します。30日の朝にカリマバードのハイダーインGHを出るので、もし会えるようなら来てください。
    イランが大統領選挙の影響で国境がクローズしているとの情報と大丈夫という情報が交錯しているのと、南側が熱いとの情報から、ここを出たらラホールに少し滞在し、他の町も通りながら一週間程度でイランにトライしてみようと思っています。
    ただ、返信を見て蒼白したと書かれていますが、私のためにわざわざ行動を決定するようなことはしないでください。旅での約束は冗談半分、ではないでしょうか?
    私も明日以降は大将様を待つことはしないので、自分の時間を楽しみましょう!
    とりあえずあさっての朝まではカリマバードにいます。

北斗 へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です