朝起きると、私の体調はなんとか取り戻していた。
歩くことができ、笑顔を作ることもできるようになっていた。
しかし、外に出ると気だるさを覚える。それが猛暑によるものなのかどうかはわからない。
昨晩、一日中寝込んでる間、私は考えずにはいられなかった。
異国にいるということ、英語ができないということ。
私がここで一寸も動けなくなって、周りに優しい人間もいなかった時、どうすればいいのかと。
病院に行けたとしても、症状をどう説明すればいいのかと。
わたしは海外に来て、初めての恐怖を味わった、それと同時に、異国にいるという実感が湧いた。
そもそもが外国に来るにあたって、『夏』なんてものを計算に入れていなかったのだ。
『脂っこいものを食べるな』というオーストラリアンの老人のアドバイス通り。
パンと野菜を買って、自分で作り、食べる。
数日前まではあんなにおいしく食べていたパキスタン料理も、今は匂いを嗅ぐだけで嫌になってしまう。
その癖に私の便はこの町の悪臭と同じ匂いを発しているのだから救いようがない。
昨晩の私は、日本食のことだけを考えていた、いや、実際には日本で受けられるさまざまなサービスのことだけを。
当然のようにエアコンが使えて、電気も通っている。
生野菜の丼やコンビニの冷たいシュークリーム。氷のたくさん入ったおいしい水。
私は海外に出てから初めて、日本食を食べたい衝動に駆られていた。
もちろん、それも今日起きて、いくらか和らいだが、それでも私は日本の新鮮な野菜や魚類、コクのある健康的な料理を懐かしまずにはいられない。
ここがインドであったなら、いくらか食べられてだろうが…。
結局、ここラホールでほぼ何も観光しないまま今日の5時から私はクエッタというアフガニスタンに近い都市に移動し、そこから数日たったのちに、イランに向かう。
イランはクレジットカードだけでなく、国際キャッシュカードも使えない。
こんな情報すら、私はこの間まで知らなかったのだ。
そもそもこのパキスタンですら、国際キャッシュカードを使える場所は限りなく少なく、お金をおろすのも一苦労である。
ATMで手数料、下ろしたルピーをドルに換えるのに手数料、それをイランで両替するのに手数料。
海外はドルのキャッシュ持ちが一番だと痛感させられた。
そして、もし今入手できた数少ないドルで、イラン滞在が足りなくなったら?
考えたくもないが、その時どうすればいいのかすら私は知らない。
もちろん無知は致命傷である、しかし、暗闇の中で光探すのが、無計画の旅の面白味でもある。
『どうにかなるだろう』
いつ何時も私に歩みをくれたこの言葉とともに、進んでいこうと思う。
続く…