2-28. やさしきおせっかい-ラホール-

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『せっかくいるのにラホールを観光しないのはもったいない』

そう思った私は、体調に不安を覚えつつも、観光地目指して猛暑の中を歩き出した。
しかし、街角のラッシーを飲んだ瞬間に動けなくなってしまった。

『病院に運ぼうか?』そういってくれるパキスタン人の言葉を断り、薬局の場所を聞き、薬を買う。

結局、2時間前に駅につき、一時間まるでホームレスのように寝させてもらうこととなった。

『ある意味、このタイミングで列車に乗るのはいいかもな…。』

観光をしなく、ただ横になっていればいいという列車移動をこのタイミングでできるのはいいことかと思ったのが間違いであった。
列車に入ってすぐに出稼ぎのアフガニスタン人が話しかけてくる。
『そこは熱いからここに座ったほうがいいよ』『スプライトかってきたよ』

うるさい、寝させてくれ。そう思いながらも好意には笑顔で答えないと、と思いまだ自我を保っていたが。
トイレ帰りに私の睡眠スペースを親子に占領されていたときに、ついに頂点に達してしまった。

『ディスマイン ここは俺のだ、どいてくれ』

日本語と英語を交えて叫んでも、彼女らは理解してくれない。やさしきパキスタン人のおかげでやっと睡眠場所を確保することが出来た。

翌朝、体調が戻るが、前回の経験を活かし、油断せず、食せずを心掛けていても、ここにもやさしきおせっかいは私の体調を邪魔してくる。

『これ食べて!』『これ飲む?』

英語を理解する大人ならまだしも、目をキラキラさせた子供に言われたのでは、私も食さずにはいられなかった。

『おいしいよ、ありがとう。』

列車の中で、物乞いと戯れ、熱心なムスリムの人に難しい単語を羅列してムスリムを語られ、『日本とアフガニスタンはフレンドだから!』というアフガンと話し、アーミーと話し、子供にアイフォンを占領されながら。

『ここは遺跡か?』と思われる街の数々を通過し、噂によれば核実験施設があるという場所を経由して、なんとかクエッタにたどり着いた。

ちなみに、クエッタにつく寸前になると、電車の窓を一斉に締め始める。

『どうして?』
そう聞くと『子供が石をなげてくるんだよ』

そんなバカな!?と思い外を見ると多くの子供が石を投げてきている。
よくわからないパキスタン人。多分、彼らからしたら遊びのつもりなのだろうか…。

列車から外を眺めたときに街を見て、私は大きな過ちに気づく。
私はきっと『パキスタン、どうだった?』と聞かれたらこういうだろう。
『いいところだよ、ノーザンエリアは美しいし、都市部はちゃんと都市だ。』

しかし、列車から見えた小さな町々は、遺跡のような半壊した家に藁の屋根があるものであった。

もちろん、上海と同様に、半壊した家に住む人々が、幸せかそうじゃないかはわからない。
物乞いですら陽気にダンスを踊っていたのだ。

ただ、今後私が泊まることが出来る場所は、都市であり観光地に限られてくる。
それを肝に銘じてこの先の旅を進めなければいけない。
横断しているといっても、私が見ているのはその国のほんの一部でしかないのだからと…。

続く…


Hokuto Aizawa
世の中にあきれられた一人の男が、世界を半周した後、北国カナダのトロントにて庖丁に出会う。日本に帰国後、ふらふらしながらも目の前にある美しい事々を見逃さないように暮らす。

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