2-66. 私はなんとなくドイツが好き-ベルリン-

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『俺はドイツが好きだよなんでかっていうと…』
そこまで言いかけて、私は何故ヨーロッパに行ったこともなかったのに、ずっと『ドイツ派』なのかわからなくなった。

バスから降りて、初めてのドイツを見る。どのような感想を抱いたか。『日本みたい』。
ベルリンの中心地の方へ行っても、その感想が変わることはなかった。
歴史的な建物と、近代的なビル、民家が混雑して建てられていて、壁には落書きと床に吸殻。
丁度、一昔前の日本ぐらいのきたなさで、私はとても落ち着いた。

そういえば、その人の生活力や性格を見抜く方法は、冷蔵庫の中を見ればいいと言われる。
冷蔵庫が空に近くて、生活臭がなくてもだめ
整理整頓がなってなくて、雑に食材が押し込まれていてもだめ
きっちりしすぎていても性格的にだめ

とってもシビアな基準を女性たちは持ってるという話を聞いたことがある。

ベルリンの町並みを冷蔵庫の中身にたとえれば、私にとってそれは完璧だった。
『ここなら住める!』そう思わせてくれる。

もしかしたらここから先の先進国はすべてそうなのかもしれないが、整いすぎてるイメージのフランスやイタリアに比べ、どこか美しいとは言えないイメージを持つドイツがずっと好きだったのかもしれない。

豊富なナイトライフとパフォーマー、多くの観光客。
かの有名な『壁』は中心地からすこし歩いたところにひっそりと点在している。

『ベルリンにとって壁はもう付属品でしかない』観光客の楽しみ方と街の活気を見ているとそう思わずにはいられない。

私は小さいとき、教科書や『世界の大事件!』的なテレビでベルリンの壁崩壊を見たとき、なんだか無性に訪れてみたくなったのを覚えている。私は何より、壁を壊すという行為が大好きなのだ。

だがそれから数年後、テレビか何かで『ベルリンはもう観光地化してる』と知り、一気に行く気が失せた。
わたしはそこにまだ壊れかけの壁があることを期待していたのだろう。

ベルリンは、さほど大きくない街で、多くの姿を見ることが出来る。
自然豊富な旧西ベルリン、近代的な建物が多い旧東ベルリン、その境目に位置する現在の中央。

その中央にある政府の建物からはベルリンを一望できる。
有名な門の通りではディズニーやマリオ、関税管理官などなんでもありのパフォーマーたち。

ベルリンがベルリンであるべき理由はもはや壁には依存していない。
なにより現在もっともタイムリーな壁が中東にあるために、こちらの壁に訪れるバックパッカーは少ないのではないだろうか?

ベルリンの中心地より、電車に乗って1時間弱のところにザクセンハウゼン強制収容所の跡地ミュージアムがある。
アウシュビッツで有名な収容所、ここはドイツで一番大きいらしい。

『労働すれば自由になれる』過酷な労働によって自由への希望さえも無へと変えてきた収容所の門に書かれた文字を超えて、その中に入る。

そこにあるのは想像を絶するものである。
映画やゲームなら18禁になるような話が、実際に行われていて、それらが目の前に広がる。
悲しむというより、想像の範疇を超えて、当時の光景を頭の中で再現しようとして、一瞬あらわれた絵が悲惨過ぎて脳が想像力をシャットダウンしてしまう。

狭くて暗い独房、当時の処刑の様子を描いた写真、トイレや浴室、、、
拷問用の吊し上げ棒、銃殺上、ガス室、人体実験室、死体置き場。

今、文字を書いていても、思い出されるのは私が目で見た光景ではない。
当時を想像した光景。ここで、人が殺されていたのか、ここで、多くの人が死んで至ったのか。
どんなふうに、こんなふうに、死んでいった、暮らしていた。

想像したくなくても想像してしまう、そこにはそんな生々しさが十二分に残っていた。

この歴史が、多くのユダヤ人を悲しみと絶望の底に陥れただけでなく、その後ドイツ人がドイツ人であることを堂々と誇れないという感情を作ってしまう。

2006年のドイツワールドカップで初めてドイツは自国を堂々と応戦することが出来るようになったという話を聞いて、私はそれらの感情がそう遠い昔の話ではないということを知った。

大切なのは悲しみにくれることではない、私は考えなければいけないと思った。
歴史がもし繰り返すものだとしたら、我々はどういう行動をもってそれをとめることが出来るのか。

それが大事なはずである。平和という強い意志を持てば、そのような残虐性など生まれないはずだ。

少なくとも、私は、私と私の家族、そして世界の点在している友人たちのために、彼らが幸せであることを祈り、どのようにすれば幸せな『世界』であるかを考えていきたい。

続く…


Hokuto Aizawa
世の中にあきれられた一人の男が、世界を半周した後、北国カナダのトロントにて庖丁に出会う。日本に帰国後、ふらふらしながらも目の前にある美しい事々を見逃さないように暮らす。

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