アムステルダム…電車の中で徐々に近づくその街の名を聞くと、股間に血が集中することを意識せずにはいられなかった。
ソフトドラッグや売春が合法の町。
水の町。
街にあふれる水路、完成された観光地としての建物群。観光客。
町中から香るマリファナの匂い。
窓から誘惑する美女。
何よりも異様なのが、老夫婦が玩具屋を見て興奮し、家族連れが飾り窓を見て笑っていることだ。
これが大学時代『セックスの国があるらしい!』と興奮してやまなかったオランダ。
飛行機で直接来たら、きっと興奮していたんだろう。
タイマスゲー!オンナダキテー!
ただ外国を旅していると、売春婦とマリファナというのはとても身近に存在するものである。
マリファナならわざわざ高い金を出してオランダで買わずとも、ネパールやインド、パキスタンで安く手に入った。
値段は知らないが、イランにはアフガニスタン製の薬物が大量に出回っているらしい。
ヨーロッパの若者にとって、それは夜のたしなみの一つである。
『シャイボーイ、カモン』
『ベイビー、ヘイベイビー』
魅了されないわけではない。
幼少期より大人のビデオの中でしか見なかったおっぱいがそこには平然とあるのだ。
しかし、私は旅に出る前から一切自分のイチモツのトレーニングを怠ってきた。
トレーニングを怠り、弱体化したイチモツにも不安を覚えたりしたのだが、一番の理由は感情の初期化である。
『筆おろしは素人で』と言うわけのわからない童貞的感情がそこには生まれてしまった。
『愛する人としかしない』というわけのわからない純情的思いが芽生えてしまった。
それは一つに、そのリミットを外して詩うと、各国の女を抱きたくなり、金がなくなりイスタンブールで帰国なんてこともありえたからかもしれない。
しかし、気づいたら私はあれほど忠実だった性欲に対する忠誠心が薄れている。
睡眠欲を忘れて友人と朝まで遊べるように
旅をする楽しさがそれを忘れさせてしまったのだろう。
結局、私は買わなかった。冷やかしを少々楽しんだだけだ。
そもそも私の大学時代の彼女だった人が、五反田で男性の心と体のケアをする仕事に従事していた人間であった。
高い金を払い、夢見ながら通った客ではなく私と付き合ってることが、私を女性遊び関係から遠ざけた。
もちろん、彼女にとっては私じゃなくてもよかったのであろうが。私は一度肌を合わせたら、一発で惚れる自信がある。
そういえば旅をしていると『日本の娯楽目的の大麻合法化』について、何度か議論する機会がある。
この場を借りて自分の意見を言うと。
『別にいいんじゃない?違法のままで』
である。
正直、難しいと思う。カジノすらも合法化されない日本で
『ハードドラッグへの入口になる』という意見はなかなか覆せないと思うし
あの独特な香りが町中から香るのは、嫌煙家からしたらたまったものではないだろう。
それに、日本をはじめ、どの国でも吸いたい人は吸っているのではないだろうか?
その程度のうしろめたさで、法律から隠れながら自己で線引きをしながらが正しいような気がする。
法律が認めてることをなんでもしていいわけではないのと同じように、逆もまたしかりだと思う。
私は、結局大麻も買春もしないで、売春婦が出勤して飾られるまでをずーっと眺めるというストーカー的行為に興奮を覚えながら嗜んだあとに、目的地のロンドンを目指してバスに乗ることにした。
続く…