3-2. 部屋を借りました。-トロント-

dd800f21

前言撤回しよう。

日本人を避けることは悪くない選択かもしれない。

南米美女とのハウスシェアの念願かなわなかった私は、いくつかのインターネットサイトで家探しを始めたのだが、そのなかでも日本人のコミュニティサイトで、安い物件を探し出した。

日本語を話せる中国移民のオーナーに連れられて行った先の家には、数人の日本人と、部屋にこもりっぱなしの中国人夫婦が住んでいた。

『こんにちは、始めまして。』
挨拶が終えて、夜になると、私は彼らとの会話を楽しんだ、そう、楽しんでしまったのだ。

『嫌悪』ではない。
楽しすぎるからなのだ、楽だからなのだ。
楽しかったことが、私がそこに住むことを躊躇わせている。楽しいということが、罪悪感に変わっている。

こんなに楽しんでいいのか??

貯金残高50万もない、23歳の男である。
人生を楽しむのは必要だ、人生は楽しむためにある。
ただ、私は楽しむためだけにここにきたわけではないのだ、ここにいたら楽しいだけで終わってしまうのではないのか…
やはり、不慣れな英語と違い、日本語は使ってしまう。

『じゃぁ英語で話そうか?』

そうじゃない。もちろんそこに照れや恥もあるだろうが、そうじゃない。私は英語が話したいのではない。
話したいのだ!
会話により互いを深め、わかり合いたいのだ。

互いに完璧に分かり合える言語を持っていないのに、わかり合おうと努力することに、そうしてもらえることが嬉しくて仕様がなかった。だから英語を勉強したいとおもった。

話せるなら日本語だっていいのだ。もし世界の共通語が日本語なら、私だって日本語で話したい。
『旅っていうのは、ドSでドMじゃないと出来ないよね。』

よく聞く言葉だ。
日本の安心安全な生活を捨て、なぜ外に出るのか。
最初は危険よりも好奇心がある、そしてだんだんと、難しいことが、楽しくなってくる。危険なことが、喜びに変わる。
終いには安心安全ほど退屈なものはないと思ってくる。多くの人間が旅が簡単なヨーロッパに入り自問自答する。

『私は旅が好きではないのだろうか?』

移動することが試練のような発展途上国と比べて、先進国は簡単ななのだ。楽しむためには自分から動かなければいけない。
より難しく、より危険で、より大変で…

『どうしてそんなところ行くんですか?』
『どうしてそんなことをする?』

何故かと?
我々は知っているのだ。
お金ではない、物でもない、セックスでもない、生きる喜び。
三代欲求を遥かに凌駕するほどに生を感じさせてくれる、生きられないかもしれないという不安を。
体験してみないとわからない。
人々が海外に行け、海外に行けと言うのはこのためではないかと思う。
もし国内に、言葉も通じず、自分一人の力で生きなければいけない場所があるなら、それでもいいのだ。
海外は私に力と喜びをくれた。
生きる力と生きることの喜びを。
それは転がり続けるものの宿命なのかもしれない。
居場所のいい場所を見つけると、毎度思ってしまう。
『永住の地を求めにきたわけではない。』
『苔が生えてしまう。』
『いいのだろうか?こんなにゆっくりして。』

いいじゃないか安泰で、安全で、落ち着いて。

だが、私は知っているのだ、自分が安心や保証と言う言葉に弱く、未来の光を見つけてはだらけてしまうことを。
光があるから人は歩ける?
違う。光があったら人は歩かない、光を探すから歩くのだ。
もっと言えば走りたいのだ。
辛くて苦しくて、走り抜けて。
その先に見える何かが欲しかった、私の旅はそういうものだったはずだ。

私にとって光は、私をだらけさせ、怠けさせ、youtubeの再生回数を闇雲に増やし、股間から何億匹の精子を噴出し、引きこもる、そういうものだ。
私にとって光は同時に闇だ。
光が怖い、光は恐怖だ。
光など見えなくていい、でも、頭の中に『光は必ずあるから。』そうインプットされていればいい。

どうすれば闇の中に入れるか。
どうすれば『これヤバイぞ、生きていけないぞ』そう思えるか。
そう考える一ヶ月にしよう、自分を追い込む一ヶ月にしよう。
ハウスメイトとルームシェアをして、私は安い家賃で一ヶ月だけこの楽しい日本人ハウスに腰を下ろすことにする。
私にとって妥協だったが、仕方ない、今はお金が先決である。

おかしいだろうか?
だが、生きていくということが、人間が生を感じる最なる瞬間なのではなかろうか。
そう生きて行こうと思う。
私は生きたい、ただのうのうと過ごすのではなく、生きたいのだ。
生きるとはなんだ。
明日に不安を抱きながら、今日を精一杯過ごすことだ。
今日を生きたい。今を生きたい。

何が難しいか、何が大変か。
そう考えて、生きようじゃないか!さぁ始まりだ。私の人生。
薔薇を踏んで歩こうじゃないか。
明日を探して生きようじゃないか!
明日に希望を見出せないなら、今を精一杯生きようじゃないか!

今に不満を覚えてる人がいるならば、是非それを明日への不安に変えて見るといい、人生は劇的にかわることだろう。

続く…


Hokuto Aizawa
世の中にあきれられた一人の男が、世界を半周した後、北国カナダのトロントにて庖丁に出会う。日本に帰国後、ふらふらしながらも目の前にある美しい事々を見逃さないように暮らす。

2件のコメント

  1. SECRET: 0
    PASS:
    股間から何億の精子を出しときながら
    語ったねー
    大変なことにトライしたいところ
    共感もてるね。なんせ、どMですから!

  2. SECRET: 0
    PASS:
    しげさん
    語り口調こそが僕の真骨頂ですよ。
    僕はしげさんほどMじゃないですけどね。。。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です