3-5. 天然イルミネーション-トロント-

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物語の更新に、空白が出来たのは、私の日常が退屈でつまらないものになったわけではないことを弁明しておきたい。

簡略に言うと、忙しかったのだ。

何で忙しかったか、アルバイトだ。
前記のように、私は二つのアルバイトを掛け持ちしているのだが、初月という事もあり、仕事になれるためにまさに大学時代を思い出す週5のアツい出勤率のため、休日という休日がなく、ここまで来てしまった。

寝て、起きて、出勤して、退勤して、出勤して、退勤して、寝て

その繰り返しである。

会って二日目に『ルームシェアしない?』と話を持ち掛けるという無茶苦茶な要望に応えてもらったうえに、朝早くと夜遅くにゴソゴソとかえって来ても文句ひとつ言わないアキラ君には頭が上がらない。

たまにできる休日に何をしていたか?
ホステルで仲良くなり、共にトロントに生きようと誓ったチリ人のポーラとトルコ人のエリスンの世話だ。
ホステルの高い宿泊費に音をあげていた彼らに、私はこの日本人ハウスを紹介し、彼らと時折外に出ては、一緒にレジェメを配ってあげたりしていた。
5件ほどレストランを回っただけで、『辛い…もう今日はやめよう…』という割に、仲良くなった日本人女性と会うためなら全力を尽くすアーティストのエリスン
『今日何してたの?』と聞くと『見てわからないの??掃除よ!』といい、二言目にはチリの自慢が始まる愛国心たっぷりのポーラ。

ダウンタウンから遠い地区に住んでいる時の私にとって、彼らとの夜10分の会話が、どんなに疲れた体も癒してくれた。
『仕事探せよ…』 と思う一方、彼らのために協力することが、同時に自分のためでもあるように思えた。

しかし、そんな彼らを残して私はダウンタウンの近くに引っ越してきた。
同居人が同じ値段で条件のいい部屋を見つけてくれたのだ。

それから生活が楽にはなった。起きる時間と寝る時間がそれぞれ1時間も伸びた。
しかしそう思ったのもつかの間、私のトロントでの初めての友人で、一時帰国してまたここに来る予定だったメキシカンのローラが予定よりも一か月も早くトロントに来てしまった。

2ベットしかない私の部屋で、女性と一緒に寝るわけにも行かず、かといって男性とシングルは気まずい。
結果的に床に寝る日々を送っている。

同居人に『すごいいろいろ起こるね…』と言われるだけあり、ゆっくりとクリスマス休暇を楽しむ暇もないのである。

毎日が似たようなことの繰り返し、またその先に移動が控えてないここでの暮らしは、少し先が見えずに、退屈に思えたり、気分が落ち込んだりすることも正直ある。

でも、そんな日常の中で起きる一つ一つが面白いと感じる、きっと住んでみないとわからなかったんだと思う事が、たくさんあり、私の毎日のサイクルに彩りを与えてくれる。

ここダウンタウンには、蜘蛛の巣のようにストリートカーと呼ばれるトラムが走っていているのだが、それが遅れることが多々ある。
一昨日にはスノースチームなるものによる大規模な停電があり、多くの車両がストップしてしまった。
こんな時、日本の公共交通機関の迅速な対応と正確な時間を思い出しては、感心する。

そのスノースチームの影響なのか、庭に咲くすべての木々が完璧に氷をまとい、それらを街頭が照らし、天然のイルミネーションになっていた。

美しいなぁ…

なんて思いながら、そんな何気ないことで、トロントに来てよかったな、なんて思ったりしてしまう。

『私はいつも楽しいの!』

いつもいつも笑顔で、笑い始めると止まらないメキシコ人のローラを見ていると、人生ってなんて素敵なものなのだろうと思えてくる。

一つ一つの小さな幸せを見落とさないように感じる。
これが私が旅で得た、人生を豊かに生きる方法の一つである。

続く…


Hokuto Aizawa
世の中にあきれられた一人の男が、世界を半周した後、北国カナダのトロントにて庖丁に出会う。日本に帰国後、ふらふらしながらも目の前にある美しい事々を見逃さないように暮らす。

2件のコメント

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    前回のも読ましてもらったけれどやっぱり、愛が全てっしょ!
    愛だよ、愛。
    しかし、カナダ楽しんでる感じだね。
    ちょっとメキシコ人の女の子と何してる!?
    部屋に女の子が泊まってる?
    まじかよー。全然面白くないよ、そんなの。
    エロスの塊にならないように!

  2. SECRET: 0
    PASS:
    しげるさん
    愛がすべてですね、ただ、高らかに叫ぶだけじゃ世界中に愛は溢れないのですよ。
    真面目な話、愛というよりか、中南米の人は横にいるだけで人生が豊かになった気になれます。
    彼女はクリスマスと年末を実家で過ごすためにここからドナドナしていってしまいましたけども・・・ 

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